女性に対しての「妊娠や育児に対する嫌がらせ」は、「マタニティハラスメント」ですが、男性に対しては「パタニティハラスメント(パタハラ)」と呼びます。パタニティ(paternity)とは「父性」のことです。最近は色んなハラスメントが多くてよく分からなくなってきましたね。。
この記事が話題になりました。
さて、このパタニティハラスメントですが、色々な問題を含んでいますね。個人的には頭ごなしに「単純に男性の育休をもっと取れるようにしろ」とは言いたくなく、色んな立場から見ていかないといけないと思ってます。
このパタハラ問題について色々と見ていきましょう。
目次
男性の育休取得率
まず、日本における男性の育児休暇取得率は異常に低いことは広く知られていますが、どれくらい低いかというと、厚生労働省の2015年度の調査結果で、
取得率たったの2.65%
です。
しかも、「育児休暇」というと期間は1年間くらい?って思いますが、
取得したうち56.9%が5日未満、17.8%が5日~2週間未満
ということで、その日数って「育児休暇」と呼ぶのかという感じです。。それなら僕も長男が産まれて1ヶ月後に5日間育児のために休んでます。(名目は入籍一年以内に取得できる結婚休暇でしたが)
詳しい調査結果は、
の11ページ~13ページあたりに載っています。
また、日本労働組合総連合会の2014年の調査結果でも同じような感じでした。
今後さらに問題になるパタニティハラスメント
そんな日本男性の育児休暇取得状況ですが、安倍首相は男性の育児休暇取得を促進する方針ですよね。
そこで、実際に今よりそういった動きが加速してきた時に、大きく立ちはだかるのがパタニティハラスメント、パタハラ問題です。数日間の「休暇」であれば、僕は実体験として相互理解の範疇で何とかなる気がします。しかし問題は、1年間前後の「長期休暇を取ってから職場復帰します」、というケースですよね。
冒頭で上げた記事のような事例では色々な立場での見方があります。
パタハラ問題の本質
昨年やっていたTVドラマ「営業部長 吉良奈津子」で主人公の吉良(松嶋菜々子)が3年の育休から戻った職場で望んでいた広告制作のポジションに戻れず、上司から言われた言葉が僕は今でも印象に残っています。
「君がオムツを替えていた3年は、広告業界にとって非常に大きな3年だった。デジタルの進化でCMに求められるものは様変わりした。ブランクは大きいよ。会社は子どもを産んだ女性を積極的に受け入れているが、腹の底じゃ不満を抱いているものも少なくない。何年も休んだ人間と、毎日汗かいてる自分たちを一緒にしないでくれって。特にクリエイティブは常に新しいアイデアが求められる。下も育ってるしな。」
「営業部長 吉良奈津子」第一話より
この「何年も休んだ人間と、毎日汗かいてる自分たちを一緒にしないでくれ」「下も育ってるしな。」という部分が、このパタハラ問題の根底にあるような気がしています。
つまり、「休んでない人から見ても公平なのか」という視点です。
色々な立場で考える必要がある
例えば同じ職場に、
「妻が専業主婦なので、仕事に専念できる人(子どもはまだ小さい)」
「独身で出世したくてバリバリ働いてる人」
がいたとして、この立場の人はどう思うでしょうか。自分たちは仕事に専念して毎日必死にコミットしていたのに、育休で1年間休んで復帰して同じような立場で働くのが納得できるでしょうか。
もちろん、今回の記事にあったような嫌がらせで辞めさせるのは言語道断ですが、例えば育休も取って出世コースからも外れたくない。これが認められるかどうかですね。
また、会社側からの視点でも、「会社・仕事」へのコミットが(相対的に)足りない社員が、大事な時に子どもが熱出したとか保育園の迎えで休まれると困るという心理が働くでしょうし、育休でいなかった時に育った替えの社員がいるはずです。会社って自分も何度も経験ありますが「この人抜けたら絶対崩壊するわ」っていう優秀な人が退職しても、案外なんとかなるもので、当然育休で優秀な人が抜けたとしても、穴はすぐ埋まるんですね。
特に、今回の記事の例では、部長職になったばかりで育休取得していて、管理職に昇進したばかりで家庭優先の姿勢というのは、事情がやむを得なかったとしても会社にとっては大きな失望だったのだろうと想像できます。
そう簡単に溝は埋まりそうにありませんね。。
パタハラを生まないために
では、このままでいいのか?
だめでしょう。こうやって「子どもを作ってもろくなことがない」ということで少子化が解消するわけありません。子どもを産みやすい環境、産んでも育てていけそうだな、という空気を増やしていかないといけないですね。
そこで、それぞれこのパタニティハラスメントの問題をどう解消していけばよいか。正直このパタハラ問題は政府主導で大きな力が働いたとしても、そう簡単に変わっていかないと思いますが、いくつかこうなればいいのにな、というのを書いていきます。
会社
働き方の選択肢を多く用意、あらかじめ開示し、育休から復帰した人に対しても総合的に判断する。また、その後の方向転換もし易いように配慮する、ということではないでしょうか。
以前、長時間労働のときにも書きましたが、色んな働き方があって良いと思うのです。バリバリ働きたい人は働けばいいし、子育てを大事にしたければ在宅勤務でその分給料もちょっと安くなる、とか。
選択肢が多く用意されて、それを自分の希望で選択できるようになるのがまず第一な気がします。
世間の意識
「男性が育児休暇を取る人もいて普通」という意識。もちろん取らないで仕事をし続けたい人はすればよい。色んな選択肢を気兼ねなく選択できるような社会になってほしいですね。
この辺りは、2016年の“育休不倫”の宮崎謙介議員は、男性の育休取得のイメージダウンにつながりもったいなかったですが。。
本人
「替えのきかない価値が自分にあるか」というのがまずあると思います。
本当に会社にとって有能な人間だったら、復帰しても喜んで迎え入れるのではと思うんですよね。この記事の人は若くて部長職になり大勢の部下を率いてたとあるので、きっと優秀な人だったと思うんですが・・・。
あとは、違ったポジションでも受け入れて、変化に対応して認めさせることではないでしょうか。こういう話を聞くにつけ、代替のきかない技能、別の会社でも通用するキャリアの形成が本当に大事だと思います。
まとめ
このパタニティハラスメントについては、まだ言葉自体それほど一般化していないように思います。(会社の数人に聞いてみましたが、ほとんど知らなかったです)
しかし、少子化対策、一億総活躍社会を政府が目指す以上、男性の育児休暇取得も加速させていくでしょう。その時に育休取得社員 vs その他社員+会社 という構図において、パタニティハラスメントの問題は今よりももっと顕在化すると予想されます。
国や会社にしても色々な働き方の選択肢を広げていってほしいですし、我々働く側も自分のキャリア形成、働き方を選ぶということをちゃんと考えていかないとだと思います。そして、必要とされる人材になれるように普段から努力していくことですね。
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