【サッカー監督のマネジメント術】『超「個」の教科書 -風間サッカーノート- / 風間八宏』

【サッカー監督のマネジメント術】『超「個」の教科書 -風間サッカーノート- / 風間八宏』

風間八宏

世間的には一昔前にマンデーフットボールをやっていた人、というイメージが強いかもしれません。(もう5年も前ですが…)

川崎フロンターレのサポーターである僕にとっては、去年まで5年間監督をやっていたので、とても思い入れがある人物です。

今回は、そんな風間さんの本の感想です。

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超「個」の教科書 -風間サッカーノート-

この本は少し前にたまたま本屋で見かけました。

はじめは「風間さんもうフロンターレの監督じゃないしなー」とあまり乗り気でなくパラパラっと中身を見たところ、時期的に当然なのですがフロンターレ時代のエピソード満載なのと、表紙にある通り、マネジメントスキルがノウハウ集として詰まっていて、気づけばレジへ行ってました。

風間八宏監督は、1961年生まれの55歳。現役時代はドイツでのプレーも経て、Jリーグ発足時のサンフレッチェ広島でプレー。日本人選手Jリーグ初ゴールを決めたのも風間さんなんです。

現役引退後は、桐蔭横浜大学、筑波大学の監督を務める一方で、フジテレビ『すぽると!』などで解説者としても活躍、2012年4月からはJリーグの川崎フロンターレ監督としてチームを強化。2016年シーズンは快進撃をみせいくつものタイトルに手が届きそうなところまでいきますが、結局は無冠で終了。風間監督も契約更新せずチームを離れました。

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この本は、

Jリーグ・名古屋グランパスエイトの新監督に就任した、風間八宏監督の新刊本。風間監督は日本を代表する「個」のサッカーの第一人者だが、本書には同監督の”一流の「個」”を育てる「49のマネジメント法」が書かれている。なぜ風間監督は若手選手からベテラン選手まで、”一流の「個性」”ある選手を育てることができたのか。”ゼロ組織”で勝つ、その哲学・メソッドが公開される。

という概要ですが、サッカーやスポーツだけでなく、ビジネスにも通じる「49のマネジメント法」が詰まっているのです。

監督はマネジメントスキルが無いと務まらない

僕はJリーグだけでなくヨーロッパのサッカーも観ますが、監督って本当に大変な職業だと思ってます。

サッカーの監督には大きく分けて二つの顔があり、戦術家とモチベーターです。

監督は、メンバー選考から戦術、相手との駆け引きを駆使し、結果に対して全責任を負う立場です。そして、スポーツは人間がプレーしますので、いかに選手が力を出せるか、勝つべくして勝てる環境をトータルで作り出すのが監督の仕事です。

風間監督は自他共に、そして自チームのサポーターもが認める変わり者だと思います。そんな風間監督がどういうメソッドで選手を育て、チームとして形作っていくのかその裏側が満載で、読んでみて本当に満足できる内容でした。

ここから先は、その中でも僕が特によかった内容をピックアップしていきます。

風間流のマネジメント術

「個を生かすことで組織にする」

タイトルにもある通り、この本の中では「個」というものにフォーカスしています。

ここでいう「個」とはもちろん「個人」のことで、「組織をつくることで個を生かす」のではなく、「個を生かすことで組織にする」ということです。

風間監督は、「監督が選手を伸ばすわけではない」と書いています。

私がやったのは、「もっとうまくなれる」「まだまだできるだろう」と選手に期待をし続けること。何かしらの才能を”持っている”わけですから、それが花開くように水を与え続ける。それこそが、監督の仕事ではないでしょうか。
(中略)
個が伸びていくスパイラルをつくることが、強いチーム、強い組織をつくることになっていくのです。

P25

まさにこれが風間監督の組織づくりの根幹の考え方なのでしょうね。

後半にも同じような記述は登場します。

個人的には「個と組織のバランス」という考え方には賛同できません。なぜなら、個と組織はお互いに高め合うものだと思っているからです。組織をつくることから入るのではなく、個人を伸ばすことで組織をつくっていくというのが、私の考える”チームビルディング”です。

P139

監督就任時の選手との約束

風間監督が新しいチームの監督に就任する時、選手と2つのことを約束するそうです。

人のせいにするな、物のせいにするな

ボールは取られるな

人のせいにするな、物のせいにするな

自分と向き合うこと。まずはそこから始まります。うまくいかないことがあった時に、すぐ何かのせいにするのではなく、自分にベクトルを向けて努力し続けられるか。苦しくても、逃げ出したくても、そうやって自分と向き合わなければ、うまくなってはいきません。

ボールは取られるな

試合でボールを取られないためには、人よりもたくさんボールに触らなければいけないし、人よりも考えて練習をする必要があります。ボールを取られても仕方ないと思ってプレーするのか、ボールは取られちゃいけないと思ってプレーするかで未来は大きく変わります。

P218

これは僕らの仕事にも活かせる話で、実際僕は自分のメンバーにも「他責ではなく自責で考えよう」とよく言っています。「もっと自分に何ができなかったのか?」ということですね。
この本のP36「逃げ道をつくらせない」の中にも「言い訳が先に出る選手は伸びない」とも書いてあり、自分がうまくいかないのは、何よりもまず自分に原因があると考えることが、うまくなるための最短距離ということです。これはどんなことにも共通しますね。

「ボールは取られるな」に関しては、僕の仕事においては「イージーミス」などに置き換えられると思いました。ミスはするものだと考えている人と、常にミスをしないように心がけてる人って肝心なところで結果が大きく違ってくるのと同じです。

リーダーとしての振る舞い「個人の利益とチームの利益を一致させる」

ここからは監督のマネジメント術です。本の中でもたびたび登場しますが「個人の利益とチームの利益を一致させる」ということが全体として共通していると感じました。

私が、選手たちに求めたのは「個人の利益とチームの利益を一致させる」ということです。つまり、個人がどんどん結果を出せば、チームも結果を出せるという考え方です。組織がうまく回るためには、自分がやりたくない仕事をやらなければいけないこともあります。一般社会でも、そういうケースは多いのではないでしょうか。でも、私は自分のチームの選手たちには、できるだけそういう風に仕事をしてもらいたいとは思っていません。自分がやりたいようにやって、フルパワーを出してほしい。それがチームにとってプラスになれば、全員が”楽しむ”という」状態をつくることができる。

P3

まずは、個人の持っているものを徹底的に良くする。それがつながっていくと、今まで見えてなかった世界が出てきて、組織になっていく。最初から監督が枠組みをつくってしまうと、個人をそこに押し込めることになってしまいます。
(中略)
個が強くなることで、組織も強くなる–。両方が”Win-Winの関係”になるのが理想です。

p139

この「個人の利益とチームの利益を一致させる」という考え方は、普通の会社のチームビルディングにも共通していえますね。

「個人の利益と組織の利益を一致させる」

リーダーとしての振る舞い「雰囲気作り」

チームの雰囲気作りに監督(リーダー)は大きな影響力を持っているのは言うまでもありませんが、風間監督が大切にしている雰囲気作りについても書かれています。

だけど、私が監督として来たのは、コーチと仲良くするためではありません。攻撃的なサッカーをつくりあげて、チームを勝たせるためです。そのために何をすればいいのかを考えた時、自分が嫌われ者になったほうがいいと思ったのです。
(中略)
もちろん、私も普通の人間です。人に嫌われるよりは、好かれるほうがうれしいに決まっています。だけど、それがチームのためになると思えば、喜んで嫌われ役になります。
(中略)
大切なことは、監督が周りにどう思われようが、強いチームにするために必要な雰囲気を作るということです。

P82

と言いつつも、「楽しむ」ことの重要性も語っています。

監督として大事にしていることを挙げるとしたら?一つに絞るのは難しいですが、あえて言うなら「楽しむ」ということでしょうか。
監督が難しい顔をしている時は、チームはうまくいきません。逆に監督が笑っている時は、チームは不思議とうまくいくものです。だから、私はどんなことがあっても、その状況を「楽しむ」ようにしています。モノの考え方を変えると、同じ景色が違って見えます。

P149

厳しくもプラス思考を忘れずに、ということですがなかなか普通の人には使い分けが難しそうではありますね。。まあよく言われる「経営者は最後は孤独だな」というのと似てるかもしれないと思いました。

リーダーとしての振る舞い「目標の掲げ方」

組織として動く以上、目標というものが必ずありますが、そこへのアプローチというものはリーダーの個性が出るところですね。

フロンターレでの目標は「攻撃的なチームを作って勝つこと」で、そのためにまずは「守備のことは考えなくていい」と極端なことを言い続けたそうです。

新しいことに取り組もうとしても、選手たちの頭の中が古いままでは、大きな効果を得ることはできません。だから、あえて極端過ぎることを言って、頭の中にあった「常識」を取り除く。それが個を伸ばすための最初のアプローチです。

P17

あえて極端すぎることを言う役割。これは以前下記のエントリーでも書いた瀬古さんの話にも共通していると思いました。

瀬古利彦さんに学ぶリーダーに必要なパフォーマンスと「言い続ける力」
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僕が毎週録画しているTV番組で「新・週間フジテレビ批評」というのがあるのですが、その番組にマラソンの瀬古利彦さんが出演していました。 ...

また、目標に対しての「方法論」が大事だと書いています。

ただ景気の良いのとだけを言っても、社員はついてきません。リーダーに問われるのは高い目標を掲げることだけでなく、そのための方法論を持っているかです。
私にとっての方法論は「絶対的な技術」です。
(中略)
日々の練習の中から伝えて、実際に試合の中で成功すれば、選手たちは「この人の言ってることは嘘じゃない」と信じてくれるはずです。

p124

リーダーとしての振る舞い「重要感を持たせる」

「重要感」は以前、『人を動かす』のブックレビューでも書きましたがマネジメントにおいてとても大事な役割を持っています。

【部長への道】重要感を与えて人を動かす術を身につけたい
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その中で大事なのは、「褒め方、叱り方」ですよね。

リーダーにとって共通の悩みとなるのが、どんな時に褒めて、どんな時に怒るのか、ではないでしょうか。

P127

はい、その通りでございます。

私の場合、褒める時の基準はハッキリとしています。「面白い」と思ったら褒めます。
(中略)
そうやって、監督が選手を見て、「面白い」と感じたら褒める。そうすると、選手は「気づいてくれたんだ」「見てくれているんだ」と感じて、どんどん新しいことに挑戦しようとします。
(中略)
大人でも子どもでも、褒められてうれしくない人などいません。みんなが「褒められたい」と思っています。とりわけ、監督というそのグループのリーダーからの褒め言葉は大きなモチベーションになります。だからこそ、監督は「褒める」というカードをうまく使って、選手たちの心に働きかけていくことが必要です。

P127

一方で怒ることについては、以下のように語っています。

怒ることも、褒めることと同時に選手へのメッセージになります。むしろ、褒めることよりも、心への影響は大きいかもしれません。怒り方によって自信を失うこともあれば、そこからグッと伸びていくこともある。
だから、怒る時には、例えばこんな言葉をかけます。
「お前にできないわけがないだろう」
私が心掛けているのは、怒ったとしても「期待している」というのを選手に感じさせること。条件反射的に感情で怒ってしまうと、相手には「怒られた」ということが大きく残ります。

P128

リーダーが重要感を与え、本人が「やりたい」と思わせるように働きかけることについて、以下のようにエピローグで書かれています。

この本でも何度も繰り返しましたが、何よりも大切なのは本人の気持ちです。

やろうとしているのか
やらされているのか

自分で目標を持って、そこに向かっていく時のパワーは計り知れないものがあります。だからこそ、監督や上司は、どうすれば本人の「やりたい」という気持ちを引き出してあげられるかを考え、アプローチしていくべきだと思います。あとは「信用」すればいい。自分が「信用」されていると思えば、どんどん実力を発揮してくれるはずです。

P222

まさに名著『人を動かす』で書かれているような対人マネジメントの真髄ですね。

サッカー関係なく、リーダー的なポジションで頑張っている全ての人にオススメだと思いました。

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