34歳にして、初めてこの名著と呼ばれて名高いカーネギーの『人を動かす 』を読みました。
元々ビジネス書は割と読む方ですが、こういった古典はちゃんと読んだことがなく、実際読んでみると、まあこれはさすがに時代を超えて読み続けられるものだなと思った次第です。
今回は、この『人を動かす』を読むに至ったきっかけや、実際に実践しようと思う内容のまとめなどをしていこうと思います。
目次
『人を動かす』を読もうと思ったきっかけ
僕は、会社(20人規模)では世に言う課長職に就いており、少人数ながらもチームを持ってマネジメントをしています。そこから更に上を目指すにはどうすればいいか?つまり部長になるには?ということですが、自分の場合は今年度の期初に上司(役員)と話をして、以下のことを言われています。
⇒課の利益を最大化することを考える
【部長】
⇒もっと広い視野を持ち、他部門と調整して最適な落とし所を探る
というのが課長と部長の大きな違いであり、その上で僕に必要なのは、
・自分がチームメンバーに注いでいる愛情を他にも広げていけるか
・他部署の価値観や利益も考えられるか
・その上で相手が納得する落とし所を設定し結果的に自分へ利益をもたらせるか
というような話を面談でしていました。
これはなかなか難しいなぁと思いまして、まず僕がやろうと決めたことは、社内でのコミュニケーションの絶対量を増やすことと、交渉術のセオリーを勉強することです。
その中でも交渉術のセオリーについては、今までも読んできたビジネス書などでも色々と書かれていましたが、ここはひとつ時代を超えて読み続けられている古典の力を借りようと思って、「人を動かす」にチャレンジしました。
『人を動かす』について
この本については当然前から知ってましたし、今までも何度も読もうと思ってはなかなか手が伸びず、というのを繰り返していました。
原題は『How to Win Friends and Influence People』といい、著者はデール・カーネギー。1937年に発売され、この80年もの間に世界で1500万部以上を売り上げている超ロングセラーです。このカーネギーの本ですと、『道は開ける』も有名ですね。
今回読んでみて、素直に名著だなと思いました。それほど古い感じもせず、登場する様々な例は自分に当てはめて考えられることができ、うまく腹落ちしました。しかし、なるほどの連続であるにも関わらず、分かっているけど実際には実行できていないことばかり。。
ここからは『人を動かす』の中身について、僕が特に大事だと思ったこと、実践していこうと思った内容について書いていきます。
重要感を持つと、人は動く
この「人を動かす」の中には、「人を動かす三原則」「人に好かれる六原則」「人を説得する十二原則」「人を変える九原則」、計30もの原則がそれぞれカーネギーが体験したり聞いたエピソードとともに紹介されていますが、その中でも度々章をまたいで登場する大事なキーワードが、
「重要感」
というものです。
重要感とは、「自分の存在が重要だと認識すること(できること)」であり、「人に好かれる原則」の6つ目として「重要感を与える──誠意を込めて。」が書かれています。以下はその中の引用ですが、
人間の行為に関して、重要な法則が一つある。この法則に従えば、たいていの紛争は避けられる。これを守りさえすれば、友は限りなく増え、常に幸福が味わえる。だが、この法則を破ったとなると、たちまち、果てしない紛争に巻き込まれる。この法則とは── 「常に相手に重要感を持たせること」 すでに述べたように、ジョン・デューイ教授は、重要な人物になりたいという願望は人間の最も根強い欲求だと言っている。また、ウィリアム・ジェイムズ教授は、人間性の根元をなすものは、他人に認められたいという願望だと断言している。この願望が人間と動物とを区別するものであることはすでに述べたとおりだが、人類の文明も、人間のこの願望によって進展してきたのである。
位置No.1562
重要感とは、「重要な人物になりたいという」「他人に認められたいという願望」ということですね。
そして、人はこの重要感が与えられ満たされると、自ら動き出すということです。正直、この本に書いてあることを端的に言うと、これだけです。
人を動かすには、相手のほしがっているものを与えるのが、唯一の方法である。
位置No.341
この「相手のほしがっているもの」というのが、重要感です。
人を動かす秘訣は、この世に、ただ一つしかない。この事実に気づいている人は、はなはだ少ないように思われる。しかし、人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起こさせること──これが、秘訣だ。 重ねて言うが、これ以外に秘訣はない。
位置NO.334
この「自ら動きたくなる気持ちが起きる」のに、重要感が必要となるのです。
それでは、人はどうすれば重要感を持つのでしょうか。どうすれば相手に重要感を与えることができるのでしょうか。この『人を動かす』には、重要感を持たせて自ら動きたくなる気持ちにさせる原則が色々と書かれているのですが、それらを大事なもので3つにまとめると、
・相手へ誠実な関心を寄せる = 重要感を与える
・批判はせず相手の顔を潰さない = 重要感を損なわない
・相手を誘導する = 人を動かす
だと思ってます。それぞれまたさらに見ていきましょう。
相手へ誠実な関心を寄せる
人に重要感を持たせるための第一歩が「相手へ関心を寄せる」ことです。
「我々は、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる」 他人に示す関心は、人間関係の他の原則と同様に、必ず心底からのものでなければならない。関心を示す人の利益になるだけでなく、関心を示された相手にも利益を生まねばならない。一方通行ではなく、双方の利益にならなくてはいけない。
位置No.995
関心を示すスタートになるのが相手の名前ですね。
フランクリン・ルーズヴェルトは、人に好かれる一番簡単で、わかりきった、しかも一番大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせることだということを知っていたのである。ところで、それを知っている人が、世の中に何人いるだろうか? 初対面の人に紹介され、二、三分間しゃべり、さて、さようならをする時になって、相手の名を思い出せない場合がよくあるものだ。
位置No.1272
そして、じっと相手の言うことの聞き手に回ることです。
話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。興味を持たせるためには、まず、こちらが興味を持たねばならない。 相手が喜んで答えるような質問をすることだ。相手自身のことや、得意にしていることを話させるように仕向けるのだ。 あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を、自分自身のことに対して持っているのである。中国で百万人が餓死する大飢饉が起こっても、当人にとっては、自分の歯痛のほうがはるかに重大な事件なのだ。首にできたおできのほうが、アフリカで地震が四十回起こったよりも大きな関心事なのである。人と話をする時には、このことをよく考えていただきたい。
位置No.1453
そして、相手の立場を十分に考え、理解します。
他人に物を頼もうとする時には、まず目を閉じて、相手の立場から物事をよく考えてみようではないか。「どうすれば、相手はそれをやりたくなるだろうか」と考えてみるのだ。この方法は面倒には違いない。だが、これによって味方が増え、よりよい結果がたやすく得られる。
位置No.2652
そして、相手の能力を信じ期待を込めることです。
子供や夫や従業員を、馬鹿だとか、能なしだとか、才能がないとか言ってののしるのは、向上心の芽を摘み取ってしまうことになる。その逆を行くのだ。大いに元気づけて、やりさえすれば容易にやれると思い込ませ、そして、相手の能力をこちらは信じているのだと知らせてやるのだ。そうすれば相手は、自分の優秀さを示そうと懸命に頑張る。
位置No.3461
すると、相手は重要感を覚え、自分から動くようになるのです。
批判はせず相手の顔を潰さない
せっかく与えた重要感を損ねてはいけません。その基本となるのが、批判をしないことです。
もう一人、偉大な心理学者ハンス・セリエはこう言う。 「我々は他人からの賞賛を強く望んでいる。そして、それと同じ強さで他人からの非難を恐れる」 批判が呼び起こす怒りは、従業員や家族・友人の意欲をそぐだけで、批判の対象とした状態は少しも改善されない。
位置No.115
批判しても何も変わらないと。それならば、ほめることが重要です。
批判を手控え、ほめ言葉を活用するというのは、B・F・スキナーの教育の基本的な考え方である。この偉大な心理学者は、人間や動物の実験によって、批判を控え、ほめるほうに力点を置けば良い行動が定着し、悪い行動は抑制されることを立証している。
位置No.3336
間違っても、相手の顔を潰してはいけません・・・。
相手の顔を立てる! これは大切なことだ。しかも、その大切さを理解している人は果たして何人いるだろうか? 自分の気持ちを通すために、他人の感情を踏みにじっていく。相手の自尊心などはまったく考えない。人前もかまわず、使用人や子供を叱り飛ばす。もう少し考えて、一言二言思いやりのある言葉をかけ、相手の心情を理解してやれば、そのほうが、はるかにうまくいくだろうに!
位置No.3251
たとえ自分が正しく、相手が絶対に間違っていても、その顔をつぶすことは、相手の自尊心を傷つけるだけに終わる。
位置No.3291
批判をしても相手は重要感を損ない、動くどころか非協力的になってしまいます。
相手を誘導する
そして実際に、相手を誘導し人を動かすためにどうすればよいかというと、まず相手に聞く耳をもたせなければなりません。
人と話をする時、意見の異なる問題をはじめに取り上げてはならない。まず、意見が一致している問題からはじめ、それを絶えず強調しながら話を進める。互いに同一の目的に向かって努力しているのだということを、相手に理解させるようにし、違いはただその方法だけだと強調するのである。 最初は、相手に〝イエス〟と言わせるような問題ばかりを取り上げ、できるだけ〝ノー〟と言わせないようにしておく。
位置No.2311
自分の過ちは素直に認めます。そうすると相手は寛大になろうとし、聞く耳を持ってくれるというわけです。
自分が悪いと知ったら、相手にやっつけられる前に自分で自分をやっつけておいたほうが、はるかに愉快ではないか。他人の非難よりも自己批判のほうがよほど気が楽なはずだ。 自分に誤りがあるとわかれば、相手の言うことを先に自分で言ってしまうのだ。そうすれば、相手には何も言うことがなくなる。十中八九まで、相手は寛大になり、こちらの誤りを許す態度に出るだろう。
位置No.2088
そして何かをやらせようと思ったら、それを相手が思いついたことにすれば良いのです。
人から押しつけられた意見よりも、自分で思いついた意見のほうを、我々は、はるかに大切にするものである。すると、人に自分の意見を押しつけようとするのは、そもそも間違いだと言える。暗示を与えて、結論は相手に出させるほうが、よほど利口だ。
位置No.2480
ルーズヴェルトのやり方は、相手に相談を持ちかけ、できるだけその意見を取り入れて、それが自分の発案だと相手に思わせて協力させるのだ。
位置No.2526
すると、相手は動いてくれるわけですね。
相手に関心を寄せ、決して批判はせず、相手を誘導する。これが重要感をうまく使って、人を動かすポイントです。
これを常に意識して実践していこうと思います。
キャリアの作り方
さて、そんな中ですが最近こんな記事を読みました。
キャリアを磨くためには、ある年齢までにやるべきことがあるという内容で、
28歳までに死力を尽くし、仕事に対する姿勢を磨く。
34歳までに多くの人と仕事をし、人について知る。
40歳までに自分を再発見し、楽に成果が出せることに注力する。
というのが書かれている内容ですが、とても納得感がありました。
そして、自分は今まさに34歳。この記事でいうところの、
「では「どうしたら人に協力してもらえるか?」について、君はどの程度知っている?」
「……。正直さっぱりです。」
「そうだ、人について知らない人は、人と一緒に働けない。34までに「人とはどういう存在か。どのような価値観を持っているのか」そして「人の多様性」について学ぶことだ。できるだけ会社の外に出て、人と会って、一緒に働いてみなさい。どうしたら人がうごくか、自分がこの人と働きたいと思うか、それを知ることがあなたの人間性を深めることにつながるんだ。」
「なるほど……。」
「マネジメントというのは、その延長にあるに過ぎない。人について知らない人がいくらマネジメントのテクニックを学んでも、部下から軽蔑されるだけだよ。」
の内容がまさに当てはまるわけで、「どうしたら人がうごくか、自分がこの人と働きたいと思うか、それを知ることがあなたの人間性を深めることにつながるんだ。」というステージにいるのだと改めて実感し、『人を動かす』を読んで色々なヒントを得たのが間違っていなかったのだと思うことができました。(ポジティブ)
目指せ部長、これからも頑張っていきます!
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