ここ数年、特に今年は例の「保育園落ちた日本死ね」もあって、『保育園』という言葉が一般にもものすごく話題になっていると思います。
この本、『保育園義務教育化/古市憲寿』は、そんな保育園を義務教育化しようというタイトルそのままの主張が詰まっているのですが、とても面白かったので感想を書いていきます。
『保育園義務教育化』は今年(2016年)に読むべき本
この本、実は2015年の7月に出版されています。「保育園落ちた日本死ね」が2016年2月ですから、その前ということになります。
僕は長男が2011年1月生まれで、共働きなので保育園探しはまさに当事者だったので待機児童問題は身近でしたが、あのワイドナショーに出てる古市さんがこんな本出しているのは知りませんでした。
最近色々と保育園問題を見ている中で、この本に行き着きました。僕はこの本の主張にとても共感しましたし、読んでみて実際に保育園義務教育化されればいいのにな、と思いました。
今年2016年は「保育園」「働き方」が大きなキーワードだったので、そんな年に読むべき本ではないかと思っています。
日本が抱える問題2つ
日本には今、二つの大きな社会問題がある。少子化と労働力不足だ。そんな時代に子どもを産んで(少子化解消の貢献)、なおかつ働きたいと思ってくれる(労働力不足に貢献)お母さんは、本来なら国が表彰してもいいくらいの存在だ。それなのに現実に起きていることは完全に真逆。労働力不足と少子化解消に貢献しているはずの親たちは、地獄の保育園探しに苦しみ、苦肉の策として「一時離婚」という案をひねり出すと炎上する。もう完全に異常だとしか思えない。
位置No.130
日本では、これからどんどん労働力が不足していく。しかもコミュニケーション能力のある女性が得意なサービス業、教育・介護産業には人手が足りていない。そんな中、子どもを産むことで少子化解消にも貢献して、進んで労働力にもなろうとしてくれる女性が、保育園探しに血道を上げるというのは、あまりにも異常な事態だ。
位置No.1099
先日もこんなニュースがありましたが、
少子化にまったく歯止めがかからないですね。。というより、そもそも恋人もいないところから結婚⇒出産、というのはなかなか遠い道のりですよね。。
もちろん、そこの解消も大事ですが、「既にパートナーがいるけど子育てが不安だから子どもを持てない人たち」に対しての少子化対策がとても大事ですよね。
保育園義務教育化のメリット
そのための保育園を義務教育化しようという主張です。
義務教育化するメリットは、
・待機児童がいなくなる
・子どもを保育園に預ける後ろめたさがなくなる
というのがまず挙げられママが子どもを産む心理的ハードルが下がるのです。
加えて子どもが保育園で育つことは、子どもの成長にとっても大きなメリットがあるそうです。
アメリカで実施された有名な実験によれば、良質な保育園へ通うことができた子どもたちは、その後の人生で「成功」する確率が高くなることがわかった。また、保育園へ通った子どもたちは、学歴と収入が高くなった一方で、犯罪率は低かった。保育園は単純に子どもたちの「学力」を上げたわけではない。「非認知能力」といって、子どもたちの「生きる力」を上げたのだ。最近の研究では、「学力」よりも、意欲や自制心といった「非認知能力」が人生の成功に重要なことがわかっている。
位置No.592
2章で見てきたように、教育経済学の分野では、「子どもの教育は、乳幼児期に一番お金をかけるのがいい」ということが定説になっている。アメリカでは様々な実験が行われてきたが、その多くが「良質な保育園に行った子どもは、人生の成功者になる可能性が高い」といった結果を示している。それは、赤ちゃんに対して数学や英語などの英才教育を施せばいいという話ではない。良質な保育園に通った子どもたちは、そこで「非認知能力」なるものを身につけていたのだ。 「非認知能力」とは、意欲や忍耐力、自制心、想像力といった広い意味で、生きていくために必要な力のことである。 「非認知能力」は人生の成功において非常に重要なのだが、それは小学校に入る前の段階で磨くのが一番いい。たとえば、夏休みの宿題がぎりぎりまでできなかった子どもほど、大人になっても計画性がないことがわかっている。そして「非認知能力」は集団の中でこそ磨かれるものだという。だから、育児は家でひっそりするよりも、みんなの中でしたほうがいい。
位置No.1704
非認知能力の重要性とか、幼児期にお金をかけることの重要性はよく言われていることですが、本当に自分が子育てをしている中でも思いますし、他の子育て中のパパママと話をしていてもよく出てくる話題でもあります。ちなみに、そういった重要性を感じている人は、そういった育てられ方をしてきていたんだなーというのが話をしていて感じるところでもありますが。。
なお、この本の中での主張では、義務教育化といっても小学校のように一律通わせるのではなく、家庭によって通わせる頻度は選択できるようにということです。つまり、専業主婦の家庭であれば、基本は母親が家で育て、週に1日や2日預けるといった柔軟な義務化です。
少子化の解消、日本の成長のために
日本が抱える「少子化」「労働力不足」の問題のためには、女性が多く子どもを産んで働く、そのための環境をみんなで作っていく必要がある、という主張がこの本の中ではひたすら繰り返されます。割と熱いです。
何度でも繰り返すが、この国は今、未曽有の少子化の中にいるのだ。僕はとにかく、女性が働きやすく、子どもを産みやすい環境を整えることが大事だと考えている。それは出生率の回復のためでもあるし、この国の労働力を増やすという意味もある。大事なことなので何度でも言うが、少子化解消に貢献してくれた上、労働力になってくれるお母さんたちが、保育園探しに忙殺されるなんて事態は異常だ(いくら少子化問題を語っていても、この事態が異常だと思わない人を僕は信じられない)。そんな国で子どもが増えるわけがない。
位置No.1276
なんで子育て支援をすることが経済成長につながるのだろうか?理屈はこうだ。きちんとした保育サービスを整備すれば、女性が働いてくれ、労働力人口が増える。さらに忙しく働く女性はルンバや食洗機を買ったり、家事関連産業の拡大にも貢献する。また現代には女性向けの仕事が増えているため、女性が働くと企業の生産性も上がる。要は、女の人に働いてもらうと、いいことずくめなのだ(本当にいい話なので、6章でもう一度とりあげる)。ちなみに、女性の労働力率を上げるには、子ども手当を支給するのではなく、保育園を整備したほうが効果的なこともわかっているという。
位置No.1291
ロジックはこうだ。まず女性が働きやすく、子どもを産みやすい環境を整えれば出生率が上がる。育児休暇や保育施設の拡充などがこれに当たる。出生率が上がれば世代間格差のバランスも改善する。女性が育児期間中も働けば、その分税収が増える。女性がキャリアを中断しないで働いてくれれば、その分生涯所得も世帯所得も上昇する。課税基盤が安定する。さらに、たくさんの子どもを持つ共働き世帯が増えれば、新規産業と雇用が創出される。保育園やベビーシッターはもちろん、託児サービス付きのレストラン、遊園地など「子ども」向けのサービスが多く生まれて、経済も潤う。要するに、いいことばっかりなのだ。「働く女性が増えると日本の伝統的な家族が崩れる」なんて妄言を吐く人もいるが、このままでは伝統的な家族どころか日本自体が崩壊してしまう。保守派の人ほど少子化を真剣に考えるべきだ。
位置No.1616
この辺りが、この本のダイレクトな主張ですね。僕も本当にそう思います。
自分の周りでも、「保育園に入れられるか分からないから」「親元から遠くて夫婦だけで育てられる気がしない」「旦那の給料だけでやっていける気がしない」といった不安を抱えて子どもを作ることに躊躇している夫婦や、子ども1人だけで精一杯で2人目を作ろうとしない家庭も知ってます。
お金や育児に不安を感じることが少しでも減って、子どもを産み育てたいと少しでも思えるようにしないとですね。
ベビーカーの電車問題も
先日、自分の実体験を元にこんな記事を書きました。
この本でもこのベビーカー問題について触れられてました。
たとえば、ベビーカーをたたまずに電車に乗ってもいいのかという論争がある。実はこの論争にはとっくに決着が着いている。国土交通省が2014年「ベビーカーは折りたたまずに乗車することができます」という宣言を発表したのだ。そしてベビーカーは、車椅子と同じように、乗車に時間がかかったり、スペースを必要とすることに理解を求めている。だからあとは、JRなど鉄道会社が「電車はベビーカーでも折りたたまず乗車できます。お子さんのいるお客様に対するご配慮をお願いします」とアナウンスをガンガン流せば、本来は今すぐにでもベビーカー問題は解決されるはずなのだ。たぶん、ちょっとしたアイディアの積み重ねや、ちょっとした人の行動で、社会は変わっていく。そのうち「ベビーカーで電車に乗れなかった時代なんてあったんですね」と言える日は必ず来る。
位置No.1902
本当にこんなアナウンスをガンガン流してほしいですよ。保育園だって、「保育園になかなか入れなかった時代なんてあったんだね」といえるような社会になってほしいですね。
まとめ
このブログでも何度も書いてますが、少子化問題は、子育て中の親たちだけの問題ではありません。日本全体が抱える大きな問題ですよね。
子どもがいる当事者だけではなく、いずれ自分たちにも関係してくる問題だという意識でみんなが取り組んで改善していく流れが加速してほしいと本気で思っています。
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