僕はビジネス書は好きですが、普段全くと言っていいほどマンガを読みません。特に苦手意識があるわけではないのですが、単純に興味が無いというか・・。そんな僕が最近全巻読破したのがこの『エンゼルバンク』です。
きっかけは、前職時代のとても尊敬している先輩がFacebook上で以下のようなことを書いていたのを見たことです。
「自分は転職の相談を受けたら、まずエンゼルバンクを全巻読めと言っている」
僕は特に転職を考えているわけではなかったのですが、そのFacebookでのコメントのやり取りの中で全社会人にオススメと書いてあったのが気になって、全14巻買って読みました。ちょうどKindleのペーパーホワイトを買ったばかりだったのでマンガも読んでみたいなという感じもありました。
結果、普段マンガを全く読まない僕でも全然スラスラと読めました。本当にテンポよく、ビジネス書を読んでる感覚です。名言がたくさんあって驚きました・・。各巻の合間には様々な業界人の転職者向けのインタビューやアドバイスなども載っていてとても為になります。自分がもし転職を考え出したら、その部分だけでもまた読み返すでしょうね。
「転職」がメインテーマのマンガですが、キャリアに悩む全社会人にオススメです。特に、この働き方が多様化している時代においてはこの「エンゼルバンク」で書かれているような学びは必要になってくると思っています。僕がグッときた名言集を含めてご紹介します。
エンゼルバンクについて
『エンゼルバンク』は三田紀房さんの作品で、ドラマでも有名な『ドラゴン桜』と同じ著者さんです。阿部寛主演で長澤まさみや新垣結衣も出ていた豪華な作品なのですが、もう12年も前なんですね・・・。
さて、この『エンゼルバンク』ですが、タイトルに「ドラゴン桜外伝」とある通り、「ドラゴン桜」の続編的な作品でキャラクターも引き続き登場します。主人公は井野真々子。「ドラゴン桜」で高校教師だった井野真々子が転職し、転職代理人になり、「ドラゴン桜」の主人公である桜木建二や、「日本支配計画」を企てる海老沢康生という井野の新上司から色々と教わりながら成長するというストーリーです。全14巻。
主人公の井野真々子が転職代理人なので、「転職」が中心テーマであることは間違いないのですが、このマンガはもっと広く日本の社会人が抱えている悩みや構造的問題にアプローチできる作品です。特に今はまだ具体的に転職を考えていなくても、今後どういったキャリアを積むべきか悩んでいる社会人、何だか伸び悩んでいると実感している社会人、部下のマネジメントに悩む中間管理職なんかも読むととても参考になると思います。
詳しくは、エンゼルバンクの名言集をチラ見していただければと思います。
今後の働き方・仕事のスタイル
ここで少し話は変わりますが、今まさに「仕事のスタイル・働き方」が大きく変わろうとしている時代です。求められる能力も変わってきていて、この「エンゼルバンク」で語られているような力がますます必要になっていくと僕は考えています。
最近、本当に偶然ですが、以下の二つのブログ記事をほぼ同タイミングで読みました。
⇒「会社に来なくても良く、仕事はどこでやっても良い」と、成功する人と落ちぶれる人がはっきり別れる。
⇒「GOETHE」 素人目線 松浦勝人の生き様 改革の枠組みは、整った
一つ目は、カルビーが在宅勤務(テレワーク)をはじめとした多様な働き方を認めることを題材にした記事です。実際に「テレワーク」というのは最近のトレンドワードで働き方の選択肢が増えることは僕自身もとても素晴らしいことだと考えています。そして、この記事ではこうした働く場所が自由になると成果がより重視さていくと書いています。とあるIT企業の例では、結果的に社員自身の持っている実力によって明暗が分かれたということです。
つまり、「意欲」や「能力」は評価の対象から外します、成果だけで見ますよ、という宣言が為されたと言っても良い。
さて、この制度を精緻に運用した結果、この会社はどうなったか。
結論としては、予想通り(というか狙い通り)30代後半から40代にかけての「実力のない社員」のかなりが、給与の大幅減を経験した。
逆に20代後半から、30代半ばの「本当に仕事をしていた層」の給与が大幅にアップした。
つまり、社内は「2極化」したのである。
そして、今後はこの成果主義と、監視下で長時間働く時間給志向と、働き方は二分されていくと書かれています。
つまり今後、世の中には2つの働き方がある。
「自由裁量、成果報酬」か、
「監視つき、時間給」かだ。
今後の企業が欲しがるのは、前者に対応できる人材だ。
ということは、「自由裁量で成果を出せる人」の市場価値は上がり、そうでない人の価値は下がる。
一方、2つ目に載せたのはエイベックス松浦社長のブログです。2017年4月からエイベックスで社内構造改革を進めていくことが書かれています。そして、来年の本社移転に合わせてフリーアドレス化、ペーパーレス化も進めていくそうです。
フリーアドレスにするということは、無理に会社に来なくてもいい、つまり働き方も多様化するということ。スタジオで音楽を制作する、ライブ会場の現場で仕事をする、自宅で仕事をする。どこにいても、ネット環境さえあればSlackなどのツールを使って、仕事に必要なコミュニケーションがとれる。でも、今はそういうリテラシーが充分でない社員もいるので、青山本社に移ってからは、そういう働き方に慣れていってもらう。
日本では、労働関係の法律によって、社員を簡単に解雇することはできない。でも、青山に移ってからは、努力をしない社員は、周りにまったくついていけない、したがって社内プロジェクトにもお呼びがかからない。結果、仕事がなくなって、給料が激減し、居場所がなくなってしまう。そんな会社になる。
「努力をしない社員は、周りにまったくついていけない、したがって社内プロジェクトにもお呼びがかからない。結果、仕事がなくなって、給料が激減し、居場所がなくなってしまう。そんな会社になる。」と社長が言っているのです。
今後、間違いなく働き方はますます多様化していくでしょう。そして自由を得た労働者達はその引き換えに「成果」がより重視されるようになります。そこには「自主性」であったり、そもそもの「実力」であったり、「問題意識」であったり。AIもどんどん業務の中に登場してくるでしょう。そんな中、ただ言われたことだけをやっているような働き方しかできない人は相対的に価値が下がり、「監視つき、時間給」の道しかなくなってしまうのでしょう。
なので、今のうちから今後必要になる力をしっかりと「エンゼルバンク」で身に付けることが必要なのです。まずは意識から変えていきましょう。
エンゼルバンクの名言集
ここからは、僕が読んでいてグッときた名言を紹介していきます。ちなみに1巻から順番に並んでいます。(重要順ではございません)
前後の話の関係が分からなければうまく真意が伝わらない部分も多いです。パラパラ見ていただき、ぜひ気になったら実際にコミックスを手にとってみていただければと思います。
「金になるから真剣に聞けるんだ」
悩みを聞くのに「お金は二の次」という井野に対して桜木が言う言葉「金になるから真剣に聞けるんだ」。これは、僕も実際に仕事の場でとても実感があります。やはりボランティアでなくビジネスで付き合っている以上、お金(自分にとっての利益)がしっかり出てこないと真剣になれない部分はありますよね。相手のためだと思っていても結局自分のためにやっていることは結構ありますが、それで良いということです。「情けは人のためならず」ですね。
なお桜木は10巻でも以下のように語っています。
何度も当たり前のことを言うな。儲けるためにやってるんだよ。(中略)
腹を空かして理想もへったくれもあるか!十分なメシを食えて初めて理想を語れるんだよ
「転職は人生のチューニングなんです」
「転職は人生のリセット」と考えて、転職すればうまくいくと思いがちですが、実際にはチューニングであると。自分が何にストレスを感じるかを見極めそれを調整するという視点でやると転職はうまくいき、一からやり直せると思っていると転職は失敗すると桜木はこの後で語っています。これはこの作品での「転職」というものの定義でもありますので、とても重要な考え方ですよね。
「会社の利益…それはね、信用だよ」
信用を得ることが何よりのスタートであると。この後、海老沢は以下のように続けます。
「信用は無形だから値がつけられない。値がつけられないものに値がつくと膨大な利益になる。目の前の小さな利益を追い求めている時は利益を最大化できない。じっくり耐えて信用を得ることがビジネスのコツだ」
そしてやがて独立した桂木は13巻で以下のように語るのです。
「成功するのに絶対に必要なもの。それは人間関係…周りの人のサポートが大切だって身に染みてわかった。(中略)みんなが僕をサポートしてくれた。みんなの紹介があったから取引先が見知らぬ僕をすぐに信頼してくれた。仕事って…信頼の連鎖を作っていくことなんだなって。」
「どこで働くかではなく、誰と働くかが最も大事」
これはもうよく転職理由などで「人間関係」がトップとして出ていることにも表れていますね。逆をいうと、働く人に恵まれるかどうかが最も大事ということです。
「大きな成功を得るには”まとも”じゃないこと。世の中の人とは逆の発想をしなくてはならない」
確かに同じ方向を向いていたら大きく突き抜けることはできません。「勇気」を持って全員と逆の向きを行くのが大事なんですね。(難しいですよね・・・)海老沢は別の場面で同じことをこう言っています。
「じゃあどうするか…人が走り出しても走らない、じっとしてる。みんなが走らなくなったら走る。成功したかったら世の中の人の逆を行けってこと。」
「履歴書でチェックされるのはその人の常識」
転職面接の履歴書については3巻で書かれています。この場面では、企業はまず「あなたの普通」を履歴書で読み取りたいと言っています。さらにこの後では履歴書について以下のようにも書かれています。
「でも履歴書は面接しようかどうか決めるための道具です。会ってみて話をしてその人を知りたいと興味を抱かせることが目的」
「人って決めてから悩むものなんだよ」
このエピソードは自分でも実感があります。確かに言われてみると、決めたあとで悩んでますね。決めると確かに基準が出来て、後回しで比較検討したりします。
「説得力ってねリスクを負うってことさ」
同じ言葉でも、「覚悟があると人の心に響く」ということですね。はい。
「会社がすべて正解だけで動けるわけないんだよ」
自分もよく正論で動きたくなっちゃうタイプなんですが、「正論が常に正解ではない」と言い聞かせてます。。海老沢は後に、この正論桂木に対して以下のように言いますがとても共感します・・。
紙の上じゃ論理でものが進むけど、仕事は人間関係で進む。人間関係を円滑にできる人が仕事で成功するんだよ。桂木さんの周りにもいるはずだよ。論理的じゃないのに人がついていって成果を出す人。「あいつはずるい」ってごねるのは君が社会を動かすものの仕組みがわかってないから
「ルールを疑わないやつらはルールを作ったやつらに利用されてんだよ」
まずは「疑え」と。
「無知を恐れずに挑戦した奴が成功するんだ」
ソクラテスの「無知の知」と似た概念でしょうか。人事異動についてのエピソードで出てくる言葉ですが、無知の分野(部署)に放り込んで会社はその社員を成長させることが会社の目的であると書かれています。
「人は人に教える時、人を育てる時に成長するんだよ」
これも実感ある言葉です。なお、この言葉は新卒一括採用についてのエピソードで登場します。新卒で社員を採用するのは、新入社員を教育させることによって既存社員を成長させるためでもあるということです。
「社員を化けさせる方法は、失敗させればいいだけのこと」
「失敗は成功の元」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。失敗すれば本気になると。人事部の前田部長は良い上司について以下のように語りました。
だから部下を育てる時いい人になっちゃダメなんだよ。いい人ぶって「失敗してもいいよ、フォローしてあげるから」なんて言われたら、失敗した後本気で焦らない。いい上司っていうのは緊張感を与えて「これをやれ」とだけ命じられる人だよ。部下の失敗を覚悟してる。部下を一度谷底へ突き落とすのが僕の考える理想の上司なんだよ!
「どんな人も気をつけないと自分にとって心地のいい情報だけを集めてしまうものなのだ」
「確証バイアス」という自分が立てた仮説が正しいという根拠となる情報を無意識に集めてしまうということで、そうならないように仮説を否定する自分に都合の悪い情報もしっかり集めなければなりませんね。
「人は命令では動かない!感情で行動する生き物だから!」
これは経営者が社員/組織の感情を動かす発信源になろうという話で出てくる言葉です。「誰と働くか」や「正解で動いているわけではない」に通じるエピソードですね。
「たくさんの種類の中から自由に選べる社会が『豊かな』社会です」
度々このブログでも書いてますが、「豊かさ=選択肢が多いこと」です。ここでの文脈は違いますが、働き方が多様化していくことにも通じる話ですし、この視点はとても重要だと思っています。
まとめ
名言集いかがでしたか。普段マンガを全然読まない僕でもとても引き込まれて一気に全14巻読破しました。実際のビジネスの現場で使えるエピソードがとてもありました。(特に考え方の部分で)
今後ますます働き方が多様化し、各社会人・ビジネスマンの意識やスキルが問われる中、取り残されていかないためにもこの「エンゼルバンク」は必読なのです。
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