【リーダーシップがわかる本】『左遷社員池田 リーダーになる: 昨日の会社、今日の仕事、明日の自分 / 鈴木孝博』

【リーダーシップがわかる本】『左遷社員池田 リーダーになる: 昨日の会社、今日の仕事、明日の自分 / 鈴木孝博』

最近読んだ中でダントツ面白かった本です。

小説の形をとっていますが、紛れもないビジネス書・自己啓発書の部類に入る読み物です。リーダーシップについて、とても手軽に、それでいて深く知ることができると思いました。

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「左遷社員池田 リーダーになる」簡単なあらすじ

フリージアはドレッシングを作る中堅企業、創業者とその片腕がアットホームな企業文化を社員たちと作り上げてきました。しかし、創業者が急死すると、後を継いだ新しい経営者が舵を取るようになり、色々と会社の体制や文化が変わっていきます。

そこへ主人公の池田など、創業者のイズムを大切にする社員たちが立ち上がり、新経営陣と対決していく勧善懲悪の物語です。

新経営陣によって左遷された池田くんが、社内報を作る役目に就いて色んな部署の人間に話を聞き回り、各セクションの役目や大事にしてることを理解してどんどん成長していくサクセスストーリーです。同時に、創業者の片腕との交換日記によって、リーダーシップ論を中心としたビジネスで大事なことが体系的にまとめられていて、とても学びが多い内容になっています。

主人公の池田くんは35歳で僕と同じ年齢ということもあり、かなり自分に重ねて読むことができました。実は自分の会社でも今は「世代交代・権限移譲」が言われています。さらに、ちょうど最近は社内報についても僕がそのプロジェクトを任されてやっていくことになっていますので、重なる部分が本当に多かったです。

リーダーシップで重要なこと

この本はどういう本かを一言でいうと、「リーダーシップが分かりやすく学べる本」です。

池田がリーダー(実際はNo.2ですが)になるために、読者と一緒に学び成長していく展開になっています。以下にこの本の中で書かれているリーダーシップについての学びの箇所を引用していきます。

人なつっこい話し方を聞いている限り、「切れ者」という印象は受けないが、とにかくその成果が素晴らしい。近藤の周りには、なぜか良い人が集まり、その良い人がまた別の良い人を紹介してくれる。そして、なぜかトクする情報が集まる。人柄と熱心さがそうさせるのだろう。

位置No.44

「人柄」って本当に大事だと思いますし、これは「才能」だな~と思いますね。なかなか作ろうと思って作れるものではないので・・・。「人に好かれる能力」ってビジネスにおいて、とても重要なスキルだと思います。

リーダーは自分自身が主体的でなくてはいけない。またメンバーの主体性を自然な形で引き出せるのが良いリーダーだ。誰だって自分の価値を認め、より輝かせてくれる人になら、ついていきたいと思うだろう。

位置No.722

リーダー自身が「主体性」であることは必須ですね。さらに、他のメンバーを主体的に導いていくのが良いリーダーということです。

●ついていきたい、一緒に仕事をしたいと思わせるリーダーの力(巻き込み力)
・情熱や本気度は伝わる。影響を受けて自分も一緒にやってみたいと思う
・仕事への真摯さが欠けていれば見抜かれる
・個人の特性に配慮したチームを編成する力がある
・リーダーに魅力(明るさ、元気さ、率直さなど)があれば、どんな苦労も充実感に
・権力や金品で支配しようとしても、あまり充足感は与えられない
・リーダーの行動や言動に、私利私欲、不純な動機がかいま見えてしまうのは論外

位置No.1758

まずは「誠実」であること。そして、他者に良い影響を与えられること。これがとても大事なリーダーな資質ですね。

●強いリーダーの行動パターン
・順調ではない人を探し、その理由を調べ、活かす方法を考える
・事前の準備(情報収集やその分析)をできる限り徹底して行い、目的と目標に照らす
・決断にあたっては、あらかじめ「止め時(撤退基準)」を定めておく
・決断したら、失敗を恐れることなく、積極的に攻撃的に全力を注ぎ込む
・どこかのタイミングで必ず前線に出て、陣頭で指揮を執る
・撤退すること、失敗を受け入れることに躊躇しない
・たとえ失敗してもその中から成功へのカギを見つけ出す。決して後悔しない

位置No.2149

ここは資質というよりは、リーダーが取るべき行動そのものですね。決断の「根拠となる情報収集・準備」「スピード・潔さ」といったあたりがポイントでしょうか。なお、これらのベースになる部分は、以下で語られています。

目的は何か? 目標をどこに置くか?  いまの状況で必要な行動は何か? 得られるもの、失うもののバランスはどうか。  決断の前にどう情報を集めるか。誰に相談するか?  決断の時は開き直る。前のめりの失敗はOK。成長につながれば後悔することはない。

位置No.1346

リーダーに必要な任せる力

リーダーは先頭に立って組織を引っ張りますが、何も自分が全てをやるわけではありませんね。当然、組織やチームのメンバーが実際に行動することが多いでしょう。この本ではそういった「任せる力」についても多く触れられています。

●任命責任について
・「押しつけ・丸投げ」と思わせないよう、定期的に進捗状況を確認し、情熱共有
・なんのためにやるのか{目的}、どこまでやるのか{目標}を定め、意識を統一
・責任の範囲を明確に定める。より成長できるよう「背伸びライン」に設定
・責任を持たせたことには口出ししない、悩んでいても答えを教えない(=育成)
・育成・成長のために、任せながらも、目的、目標からズレないよう見守る

位置No.1550

僕も自分の仕事において、数名のメンバーを持っていますが、このあたりの難しさはとても感じています。特に「責任の範囲を明確に定める」「責任を持たせたことには口出ししない」という部分ですね。最後まで任せたいのはもちろんなのですが、大事なクライアントへ迷惑をかけても困る。途中で口を出すとどうしても「最後まで任せてくれない」という形になってしまいます。一歩引いて見守るというのはとても難しいんですよね・・。

橘新社長は、経営状況の監視については、山下と山沢の経理チームに任せた。自身は「新世代P」を速やかに進めることに全力を注いだ。特に人員の配置と社外への業務委託状況については、必ず自分の目と耳で確認した。逆に、それ以外の雑多な管理は、全体を統括する池田と、各部門長に指揮させた。そのやり方は、実務リーダーを中堅・若手から選出し、権限を与えることを徹底させるものだった。

橘は、その実務リーダーとの短い打ち合わせを頻繁に行ったのだ。そのやり方はほぼ決まっていて、必ず目的→目標→手段の順で確認していった。 「オーケー。そこまで考えていれば大丈夫。やり方は君に任せるので、みんなと話し合いながら進めてくれ。そっちの方が面白いだろ? ただ、何かあれば必ず上に報告を頼むよ」  そして橘が去ったテーブルでは、すぐにスタッフミーティングが開始されるのだった。

位置No.2048

「目的→目標→手段」の順で確認していくこと。「君に任せる」「何かあれば報告を頼む」ということも敢えて言葉にするのが大事なんですね。この辺りはとても参考になります。

人は必要に迫られたり、ワクワクするような意義を見出した時、どんどん成長していきます。そのためには、まずは徹底的にあり方を考え、「目的」にこだわること。そして現場の一人ひとりが、活き活きと行動できる環境をつくること。それが自律的な強い組織風土づくりにつながります。階層に応じて求められる機能と行動に違いはあるにしても、組織を貫き基盤となる価値観を一致させていったならば、リーダー人材はその過程で育つものではないでしょうか。

位置No.2495

「目的」にこだわること。これはこの本の裏のテーマでもあると思います。「目的」を考えて主体的に行動することがリーダーシップの第一歩ですね。目的については以下のところでも触れられてます。

企業が追い求める幸せとは?

この本の会社「フリージア」のキャッチコピーは、

美味しさでもっと幸せを

です。創業者が大切にしていた想いであり、この「幸せ」については、以下で書かれています。

多くの人を幸せにするには、まず自分を幸せにすること。次に自分の身近な人たちや、自分の愛する人たちを幸せにすること。そうやって広げていくもの。そうでないといくら「もっと幸せを」と言っても、それは虚しい空論であり、ウソだ。ウソはいつか必ずばれる。自分の幸せ、家族や従業員の幸せを犠牲にした経営は、最終的に誰のことも幸せには出来ない。わかるね?

位置No.923

物語の中で、このキャッチコピーは2回変更が話合われます。

まずは、新経営者によって「幸せ」という曖昧な概念は無くそう、という提案で、

美味しさをもっともっと

に変更されそうになります。これは未遂で終わりますが、池田を中心とした新体制によって、最終的に以下に変更されます。

美味しさは幸せ

この流れは、個人的にとても興味深く読んでいました。最近、会社のスローガンってとても大事だなと思っていて、何か迷った時の指標になる「言葉」というのは必要です。フリージアにしても、何か新企画とかで迷った時でも「「それでお客さんを幸せにできるのか?」という指標になります。そして、これは解釈になるべくバラツキがでないように、シンプルであればあるほど良いですね。

そういう意味では最後の「美味しさでもっと幸せを」から「美味しさは幸せ」へと変わるところは秀逸ですし、途中に「美味しさをもっともっと」が入っていることによって、「幸せ」というキーワードがクローズアップされているのがまた良いです。

まとめ

この「左遷社員池田 リーダーになる: 昨日の会社、今日の仕事、明日の自分」は、とても読みやすい企業小説です。

池井戸潤の半沢直樹シリーズが好きな人とかは、間違いなくハマるのではと思います。こちらのほうが、もっと学びの部分がクローズアップされ、ビジネス書に近い形といえますね。

20代や30代、これからリーダーを目指していく人たちにオススメしたい本です。



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